小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をコラムとして書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。(Copyright (C) 2006-2024 Y.Ishii All Rights Reserved.)

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 人は一生で何度涙を流すのだろうか。それぞれの年齢、性、生活環境、性格などによって千差万別なのかもしれない。いずれにしても、人生は涙とは切っても切れない縁があるのだ。今日は3・11から13年目。あの大災害と原発事故によって、本当に沢山の涙が流れたのは間違
『2548 人間にもほしい「瞬膜」 悲しみと涙の連鎖「3・11」』の画像

 (近所で咲いたボケの花) 春はきぬ   春はきぬ さみしくさむくことばなく まづしくくらくひかりなく みにくくおもくちからなく かなしき冬よ行きねかし 島崎藤村(1872~1943)の詩集『若菜集』の中の「春の歌」の2節目だ。何とも暗く、寂しく、希望がない内容
『2538 さまざまな春が来る 暗くて寂しい藤村の詩だが……』の画像

(開花が近いモクレン。芽が膨らんでいる)「遠い国には戦があり…… 海には難破船の上の酒宴(さかもり)……」と書いたのは石川啄木(『心の姿の研究(3)』の「事ありげな春の夕暮れ」)だ。啄木より21歳後輩の中原中也は「幾時代がありまして 茶色い戦争がありまし
『2537 遠い国から近い国での戦争  ウクライナ侵攻2年』の画像

 先日、気象予報士が言っていた。2月としては史上最高の陽気になりました、と。 今日は冬に逆戻り。糠雨よりももっと細かい小糠雨が降っている。 いつもの調整池、歩くのは私一人。 雑草が生い茂る一角から顔を出した雉鳩一家。 枯草をきれい刈った斜面。嘴でしきりに
『2536 自然からの便り 2月の雨の日に』の画像

 人それぞれに好きな場所がある。自宅の居間や自分の部屋が一番という人もいるだろう。あなたはどこだろう。町の本屋、喫茶店、映画館、図書館、美術館、寺や神社、居酒屋、パチンコ屋、山や海? フランスの詩人シャルル・ボードレール(1821~1867)は「港」であり、日本
『2513 あなたの気に入った場所は? 詩人が描いた「港」と「郵便局」』の画像

 戦争は様々な才能の芽を摘み、あるいは奪ってしまうことは多くの先人たちの例が示している。このブログでも、彫刻家の高橋英吉、詩人の大関松三郎、ゼルマゼルマ・アイジンガー、アンネ・フランクら、戦争と戦争関連で亡くなった有名、無名の人々を取り上げている。イギリ
『2509 理不尽に摘まれた才能の芽 人間は戦争の大きさを越えている』の画像

 つい先日(13日)の夕方、私の住む地域で今冬の初雪が降った。久しぶりに遠出をして電車を降り、駅舎から出ると、ボタン雪が私に向かってまとわりつくように風に舞っていた。中原中也(詩集『秋』の「生い立ち」)流にいえば、「私の上に降る雪は 故郷の風景思い出す」
『2508 初雪へ祈る被災地の復旧 中原中也の詩とともに』の画像

 時々、地図を取り出し、新聞やテレビでニュースになった場所を見る。今年最初に見たのは、もちろん日本地図の石川、富山両県の頁だ。元日に大地震に見舞われた輪島半島は、細長く日本海に突き出ている。コロナ禍の時期も地図を広げて「空想の旅」を楽しんだ。しかし、今回
『2502 不幸を幸福へ変える力を 能登半島地震と犀星』の画像

 詩を好きな人なら、大関松三郎という大相撲の力士のような、古風な名前を聞いたことがあるかもしれない。大関は18歳という若さで戦死した詩を愛する青年だった。この19日は大関没後79年になる。この機会に、大関の『雑草』というタイトルの詩を読み直した。小学校卒
『2442 稀有な才能の輝き 大関松三郎とゼルマ18歳の青春』の画像

(街路樹のけやきも大部分葉が落ちた)私が住む関東地方は、冬になると西高東低の気圧配置によって晴れる日が多い。青空が広がる風景を見ながら、日本海側の方々には申し訳ない思いになることがある。今日は晴天。風がやや強く、空に雲は見えない。城左門(じょう・さもん190
『2433 風が歌う平和な世界 城左門『青空』に寄せて』の画像

 今朝の日の出は午前6時だった。西の空には月が輝き、その横には木星が光を放っていた。いつものコース。その下方の空はピンクの帯、さらに下には藍色の空が広がっている。こんな空を見て、立原道造の「かなしいまでに」という詩の一節が頭に浮かんだ。美しい風景に接する
『2415 自然は選り好みがない 早くも出現ビーナスベルト』の画像

 スポーツのリレー以外にもさまざまなバトンタッチがある。四季がある自然界。観察していると、今はバトンタッチの季節といえる。私の散歩コース、調整池の周辺でも蔓延っていた葛に代わるように、急にススキとセイタカアワダチソウが目立ってきた。前者は白に近い灰色、後
『2399 季節のバトンタッチ 秋思のこのごろ』の画像

 詩人、木原孝一(1922~79)が、東京への空襲で死んだ弟のことを書いた「鎮魂歌」という詩がある。弟への思いをたどりながら、1928(昭和3)年から1955(同30)年までの時の流れを追った反戦詩といえる。その最後の節は以下の通りだ。 一九五五年 戦争が終わって 十年経
『2359「鎮魂歌」と「碑銘」の詩人の夏 核抑止論で覆われた世界に』の画像

テロや核問題や殺人 今日の朝刊も犯罪地図を描いている 他の群れを支配したいという動物の 本能を持ったまま脳を肥大化させたヒト 自分さえいま良ければのエゴイズム ⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄ これは、詩人飯島正治さんの「朝の散歩」(200
『2351 犯罪地図を捨てよう エゴとは無縁の朝の散歩』の画像

(冬でも元気な水仙の花) 所属している句会の主宰者から「季題」が届いた。4つのうちの1つが「水仙」だった。主宰者による説明には「ヒガンバナ科の多年草。海岸などに野生もあるが、多くは観賞用切り花」とあった。このブログでも水仙のことは何度(下段)か取り上げて
『2253 水仙は優しき強い花 ワーズワースの詩に浸る』の画像

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